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トヨタ車体は、トラックボデーの専門メーカーとして1945年に発足以来、常に時代に先んじた製品を世に送りだしてきた。現在は、トヨタ自動車(株)のCV Companyの中核企業としてミニバン・商用車・SUV・福祉車両・超小型EVなどの企画・開発から生産までを担い、今後は、海外の車種にも対応が拡大していく同社では、2018年、富士松工場においてベルリッツの「異文化理解・対応力研修」を導入した。その導入の背景、目的、導入後の成果について伺った。

ベルリッツが選ばれたポイント

  • 既存研修を補完できるアウトプット型研修
  • 個人の文化的志向を可視化、ロジカルに説明できる説得力

導入された内容

  • 現地子会社に出張支援予定の約50名に異文化理解・対応力研修を実施
  • 出張先の地域に合わせカスタマイズ、通常3日間の内容を1日に圧縮

導入による成果

  • 現地子会社社員の考え方、行動への理解が深化
  • 現地子会社社員とのコミュニケーションへの積極性が向上

インタビュー

赴任中に立ちはだかったのは、言葉の壁ではなく文化の壁

トヨタ車体株式会社 富士松工場 工務部 海外推進室
森田 哲正 氏 超小型EV「コムス」とともに

「私は以前、アメリカ(ミシシッピ)での子会社立ち上げに際して、生産管理・物流の担当者として現地に赴任していました。
自分の担当する部署の中で、会社設立にあたっての現地社員採用から職務分掌の規定、研修など、労務マネジメント全般に携わる中で、言葉の壁は何とか乗り越えてきましたが、それ以上に文化の壁に苦戦しました」

そう語るのは、富士松工場 工務部 海外推進室の森田 哲正 氏、異文化理解・対応力研修導入の立役者だ。
現地では、こちらは伝えたつもりでいることが、現地社員に伝わっていない、ということが何度もあったそうだ。トヨタ車体では従来、赴任者に対しては外部研修、出張者に対しては内部研修で、知識のインプットに主眼をおいた異文化研修を実施していたが、それでは不十分だと痛感したという。

「当時は、なぜかは分かりませんでしたが、こちらの考え方や伝え方、態度が、彼らに受け入れられていなかったのです」と続ける森田氏は、後にそれが職業観や対人関係の捉え方に関する違いに起因するものだという気づきに至る。

異文化の相手に伝えるために必要なのは
「アウトプット」する力だった

赴任中、森田氏には別の気づきもあったという。
「私は事務員なのですが、技能員たちは、英語が不得手でも、現地のローカル社員とのコミュニケーションを取れていました。職位が高いものは、特にその能力が高い。ただ、おそらく肝は一緒なのだと思いますが、人によって実際のアプローチというか、コミュニケーションのスタイルは全く違うんです」

それが、今回の異文化理解・対応研修採用の糸口となった。
「やはり、一人ひとりが備えている個性の中で、自分自身のスタイル、自分なりの引き出しを持っていなければだめで、ひとつの教育を押しつけて一つの形にはめるというのは正しくないだろう、と。
そのためには、勘所のインプットだけでは不十分、しっかり考えてアウトプットするトレーニングを行うことが重要だろう、と考えました。それで、アウトプットに重点をおいているベルリッツの異文化対応研修を追加することで、教育のバランスが整うのではないか、と考えました」

一握りの赴任者ではなく、現場のプロジェクトメンバー全員に研修を

トヨタ車体株式会社 富士松工場
工務部 海外推進室 森田 哲正 氏

赴任中の森田氏は、次々と訪れる出張者のケアを行う中、彼らが些細なやり取りや業務遂行に非常に苦労している姿を目の当たりにした。
「彼らに通訳をつければ解決するというものではありませんでした。プロジェクトの成功のためには、トヨタ車体の技術を確実に伝えることのできる出張者を育てることが急務だと強く感じました」

そこで今回の研修で対象とされたのは、まさしく、現地でプロジェクトを支援する計画立案や資料作成といった業務に従事しているプロジェクトメンバーたちだった。
「事技系、技能系と業務は人それぞれ、携わっている工程もさまざまですが、皆、日頃から職長として人に技能を教えたり、プロジェクトの準備に携わったりしている、各職場選りすぐりの者たちです。海外出張しても同じように製造準備を行えることを期待されています」と語る森田氏からは、メンバーへの信頼がうかがえた。

新しい研修導入に不安はつきものだが、
フタを開けたら強い手ごたえが

晴れやかな笑顔を見せる森田氏だが、導入前に不安がなかったわけではない。
「今回の対象者にとってはこれが初めての外部研修でしたし、従来の教育はインプット型が多く、アウトプット型の教育にあまり慣れていない点は大きな不安要素でした。普段聞きなれない専門用語や抽象的な単語が皆に理解できるか、ということも心配でした。
研修では平易な言葉を使っていただけるようにベルリッツさんにお願いしました。また、すでにアメリカ人とのコミュニケーションにネガティブな印象を持っている社員がいた場合に、この研修がどう受け止められるのかという不安もありました」

そうして迎えた研修当日は、まさかの大雪。しかし、全ての不安は杞憂に終わった。
各自に文化的志向性を自覚させた上で行う、実際に関わる相手の地域に合わせた実践的な内容のアクティビティは、参加者に強い当事者意識を持たせた。
「大雪対応に出た者を除けば一人の遅刻もなく、グループワークでは熱心な議論が行われ、発表も意欲的で、その様子を見て強い手ごたえを感じました。プロジェクトにかける意識、この研修の重要性といったものを、皆に共有できたのではないかと思います。この研修でつくりあげられた個人のコミュニケーションスタイルを、ローカルの人間と相互に理解しあう一方通行ではない関係づくりに活かして、支援活動を成功させてもらいたいです」

研修後に嬉しかったのは
「現地社員を本当の意味で受け入れられた」の声

研修後、参加したメンバーから面白い感想があったという。
「研修の中で、会議はインフォーマルな話題から入る、というお話がありましたが、本当にその通りで、ローカルのメンバーは重要な会議でも雑談から始めるスタンスを崩さない。こっちは一生懸命やっているのに、あちらは何でそんな不真面目なんだ、と不満に思っていました。でも、今回の研修で、雑談の意味合いが分かり、それを受け入れることが相手の文化を本当の意味で受け入れるということだと納得できました、というのです」

「皆似たようなことを言っていて、今まで漠然とそんなものかと思っていたことや、なぜ?と疑問に感じていたことの背景が分かり、誤解が解けた、過去の経験が体系的に理解できた、といったポジティブな反響をたくさん受け取りました」
森田氏はこのような声を、何より大きな収穫として受け止めている。

参加者のマインドに変化が。成果は数値にも表れた

研修後まもなく、富士松工場ではミシシッピから大勢のローカル社員を受け入れた。
「今回からは自分の部署でコミュニケーションをとって下さい、と頼んだところ、各部署で対応要員を出し、それぞれの部署内でローカル社員のサポートやケアをしてくれました。待ち合わせをしたり、お昼ご飯を一緒に取ったり、週末には観光に連れて行ったりと、積極的に自分から声を掛けている姿が見られました。去年までと全く違って、皆、日常会話レベルの英語と身振り手振りで一生懸命コミュニケーションをとって、色々やってくれて、トラブルもありませんでした

従来は、森田氏がコミュニケーションの窓口となり、移動や食事の手配、各種会議のアテンドまで孤軍奮闘していたという。詳細なマニュアルを用意して渡していても、一人ではどうしても目が行きとどかず、大小様々なトラブルが起きていたそうだ。
「今回も受け入れ方のマニュアルは用意して渡したし、現場の巡回もしていますが、目に見える数値として私の対応工数が減っています」
そのように皆が「まずは自分でコミュニケーションをとろう」と努めてくれたのは、研修を通じて、異文化と向き合う基本の姿勢が身についたからではないか、と森田氏は言い添えた。

今後は、よりグローバルな環境に対応できる人材を増やしていきたい

トヨタ車体株式会社 富士松工場にて
異文化理解・対応力研修

「トヨタ車体は、これまで国内を中心に事業を展開してきました。
これからは、海外でも仕事をする機会が増えることが予想されます。
これからは、異なる環境、言葉、考え方の人と積極的にコミュニケーションをとって、一緒に働いて成果を出せる人材が求められます。
常に新たな活躍のフィールドを求めてチャレンジできる人材が、仕事を通じてスキルを磨き、会社は教育や環境を整えてそれをサポートする。そうやって社内の意識を変え、チャレンジすることそのものが賞賛され、高い評価を受けるような会社にしていきたい」

森田氏は最後に今後の展望をこのように語ってくれた。今回の研修を振り返るに、このビジョンが達成されるのも遠い未来ではないだろう。

受講者の声

日頃のやり取りやテレビ会議のときの姿勢に、目に見えない変化

研修では、アメリカ南部の歴史を深く学ぶことができました。歴史を知ることによって、現地ローカルスタッフ特有の性格や現地の風土などが、どのように形成されていったのかが分かり、それは自分にとって発見でした。
それから、より深く相手を理解しようと考えるように変わりました。相手の立場に立って、自分との違いを、単に「差」として意識するのではなく、なぜ、その「差」を自分が意識しているのか、それを埋めるためにはどうしたらよいのか、というところを深く考えるようになりました。

私の部署からは、私を含めて3名が受講しました。その後、目に見える変化があるわけではありませんが、私も他の2名も、現地の考えを深く理解しようと心がけるようになっていると思います。
現地ローカルスタッフとのやり取り、テレビ会議などの場では、少なくとも何を言おうとしているのか、何を考えているのか、というところを、表情や言葉の抑揚を通して読み取ろう、という姿勢になっているのではないかと感じています。

まだ現地のスタッフと接触したことのない人におすすめしたい

文化の違いというのは、あって当たり前です。
今回の研修は、その違いをどう埋めていくか、ギャップをどう縮めていくか、一人ひとりが自分自身で考える良い機会でした。自分の行動や人との付き合いに活かしていける内容で、有意義だったと思います。

現地の方々との接触をまだ経験していない人には、特に受講をすすめたいです。
なぜなら、最初に壁にぶつかるのは言葉だと思いますが、言葉とともに、向こうの文化や風土を事前に理解しておくことで、彼らの考え方、性格、行動をより深く理解でき、コミュニケーションも取りやすくなると考えるからです。

ベルリッツの異文化理解・対応力研修の流れ

午前
アクティビティ ウォームアップシミュレーション 異文化コミュニケーションで起こるギャップを疑似体験
アクティビティ 異文化の体験談共有 自分の体験を伝え合う
講義 文化的志向性について 異文化理解・対応力の要素、文化的志向性アセスメントの説明
アクティビティ 各自の文化的志向性の可視化 ポスター作成、プレゼンテーション、フィードバック
午後
講義 異文化知識 現地子会社のあるアメリカ南部の歴史・文化的背景
アクティビティ 実践シミュレーション、ケーススタディ 軋轢を避け、よい関係を構築するためのコミュニケーションを練習、挑戦

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※掲載の情報はインタビュー当時のものです。

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