中国語のピンインとは?

ピンイン(拼音)は最も標準的かつ、唯一中国政府に認可された中国語のローマ字表記システムです。「発音を表す単音節のアルファベットのセット」と「音の高低変化を表す記号」が、一つひとつの漢字に割り当てられています。

例えば「好」という漢字はピンインでは「hǎo」と表記されます。これを知っていると、正しい発音が分かる上に、パソコンやスマートフォンでの入力ができるんです。日本語キーボードのローマ字入力と似ていますね。

ピンインなしでも中国語の漢字が読めるようになるのがゴールですが、まずはピンインでしっかりと発音をマスターしましょう。

ピンインの構造

アルファベットを使って発音を表現するピンイン。日本語のローマ字とは違い、「音が似ている」というだけで割り当てられている訳ではありません。なのでピンインを英語やローマ字のように読まないよう気をつけましょう。

ピンインの音節は以下の3つの要素から成り立っています。

  • 声母(頭文字):ピンインのほとんどは1つ、あるいは2つの子音で始まり、これを声母といいます。子音のないものもあります。
  • 韻母(語尾):声母以外の部分を韻母といい、母音のみ、または母音と子音が組み合わさったものです。母音や子音は一つの場合もあれば、複数の場合もあります。
  • 声調符号:音の高低変化(声調)を表す記号。ほとんどのピンインには4つある声調符号の一つが含まれ、ない場合は特徴のないニュートラルな発音になります。

漢字の「好」のピンイン「hǎo」の場合、「h」が声母、「ao」が韻母、「a」の上の記号が声調符号に当たります。次に、日本人にはあまり馴染みのない「声調」という概念についてみていきましょう。

中国語の「4つの声調」

声調をマスターするのは根気のいるプロセスです。最初はあまり気負わず、基礎からじっくり習得していきましょう。

標準中国語(普通話)には4種類の声調があり、それを「四声」と呼びます。4つの声調を聞き分けられ、正しく発音できるようになるのが中国語習得の第一歩です。

第一声

第一声は直線の声調符号「-」で表されます。

母音を発音する際にフラットな高音をキープするので、声調符号の表すイメージに近いですね。

第一声の例

単語ピンイン主な意味
(代名詞としての)彼
数字の一
zhōng中(日本語とほぼ同じ概念)
shuō話す

発音をこのサイトでチェック(左上のメニューから「1声」を選び、該当するピンインをクリックすると音声が再生されます。)

第二声

第二声は右肩上がりの直線の声調符号「´」で表されます。

これも声調符号の通り、低めの音から高音に跳ね上がる発音です。驚いて「ええ?!」「はあ?!」などと聞き返すときのイントネーションに近いと言えます。

第二声の例

単語ピンイン主な意味
rén人(日本語と同じ)
yuán庭園
wén文字、言語、文章
手に取る、持つ、運ぶ

発音をこのサイトでチェック(左上のメニューから「2声」を選び、該当するピンインをクリックすると音声が再生されます。)

第三声

第三声はV字型の声調符号「ˇ」で表されます。

符号の形のように変化するというよりは、低めの音から更にぐっと低い音に落ち、最後に力を抜く感じです。(結果としてやや上がったように聞こえます。)

がっかりしたときの「あーあ」に近いイントネーションです。

ただし、最後が上がって聞こえるのはその漢字が単体で発音される、または文末にある場合などに限られます。それ以外では「半三声」と呼ばれ、「低音の第一声」のような発音になります。

何かとルールの多い第三声。苦手意識を持つ学習者も多く、「他の声調より習得に時間がかかるんだな」くらいの心構えで大丈夫ですよ。

第三声の例

単語ピンイン主な意味
hǎo良い
zǒu歩く
〜も〜である

発音をこのサイトでチェック(左上のメニューから「3声」を選び、該当するピンインをクリックすると音声が再生されます。)

第四声

第四声は右肩下がりの直線の声調符号「`」で表されます。

この声調は、高い音から一気に下がります。抱えていた重い荷物を下ろして「ふう!」と一息つくようなイントネーションです。

第四声の例

単語ピンイン主な意味
行く
shàng上の、上がる、乗る
〜しない、〜でない
ài愛する

発音をこのサイトでチェック(左上のメニューから「4声」を選び、該当するピンインをクリックすると音声が再生されます。)

軽声

第五の声調というより「声調のない発音」なのが、軽声(けいせい)です。声調符号はありません。

他の声調のように単独で存在するわけではなく、四声のいずれかで発音される他の漢字の後に続く場合のみ使われます。その正確な発音は直前の漢字の声調に左右されますが、基本的に軽く、短い音になります。

軽声の例

単語ピンイン主な意味
妈妈mā ma
什么shén me
你呢nǐ neあなたは?
我们wǒ men私たち
朋友péng you友人


それぞれの声調の違いや発音方法を、動画でも見てみましょう。日本人に分かりやすく説明されているので、ぜひチェックしてみてください。

声調の組み合わせ

中国語には2つの漢字からなる単語が多く、ピンインもセットで覚える方が効率的だといえます。ここでは四声の組み合わせで発音がどのように変化するか、見ていきましょう。


第一声との組み合わせ

この組み合わせは、続く漢字の声調が変化しないので、比較的簡単です。

とはいえ、いくつか例外もあります。例えば第一声と第三声のペアで、かつ最初の音節(第一声の漢字)が強く発音される場合、第三声が軽声に変わります。(第三声の漢字が接尾詞や助詞などの場合もこのケース。)

例えば「机」という意味の「桌子」(zhuō zi)という単語は、第一声で発音される「桌」(zhuō)という漢字と、第三声で発音される「子」(zǐ)という漢字で構成されています。「子」は接尾詞で、声調がなくなり軽声になるのです。

下の表にある「喝水」(hē shuǐ)という言葉は、「水」(shuǐ)という音節が強く発音されるので、第三声が軽声になることはありません。

声調の組み合わせ単語ピンイン主な意味
1 + 1今天jīn tiān今日
1 + 2中国zhōng guó中国
1 + 3喝水hē shuǐ水を飲む
1 + 4工作gōng zuò働く


第二声との組み合わせ

第二声で音が上がったところから、スムーズに次の音節を正しく発音するのは、中国語学習者にとって難しいと言われています。特に第二声が続く場合や、第二声と第四声の組み合わせは、練習が必要です。

声調の組み合わせ単語ピンイン主な意味
2 + 1时间shí jiān時間
2 + 2如何rú héどのような、どのように
2 + 3没有méi yǒu持っていない、存在しない
2 + 4文化wén huà文化、教養


第三声との組み合わせ

この組み合わせに関しては、次の2つのルールをしっかり覚えましょう。

  1. 第三声同士の組み合わせは、必ず最初の第三声が第二声の発音になる。(声調符号は第三声のまま。)
  2. 第三声以外の声調が続く場合、最初の第三声は半三声になる。(最初の音節を低くおさえたまま、次の音節が発音される。)
声調の組み合わせ単語ピンイン主な意味
3 + 1北京běi jīng北京
3 + 2爱情ài qíng(主に男女間の)愛情
3 + 3 → 2 + 3你好nǐ hǎoこんにちは
3 + 4暖气nuǎn qì暖房


第四声との組み合わせ

特に声調が変化しないので、覚えやすい組み合わせです。ただし第四声が続く場合、最初の音節の方が強く発音されます。10段階でいうと、最初の音節の強さが10、続く音節の強さが6、くらいです。

声調の組み合わせ単語ピンイン主な意味
4 + 1唱歌chàng gē歌を歌う
4 + 2问题wèn tí問題
4 + 3汉语hàn yǔ中国語
4 + 4动物dòng wù動物

面白い声調の間違い例

同じ「さんじ」という音の日本語でも、アクセントの違う「3時」と「惨事」ではまったく意味が異なりますよね。「アクセントやイントネーションを間違えて、全然違う意味にとられてしまった!」というのは、外国語学習者が必ず通る道だと言っても過言ではありません。

ここでは、声調が違うだけでとんでもないギャップができてしまう例をご紹介します。もし似たようなミスをしても、笑ってネタにするくらいの心構えで大丈夫です!

例文 ピンイン 意味
1 我可以你吗? wǒ kě yǐ wèn nǐ ma? 質問してもいいですか?
我可以你吗? wǒ kě yǐ wěn nǐ ma? キスしてもいいですか?
2 我爱我老板 wǒ ài wǒ lǎo bǎn! 私は上司が大好きです!
我爱我老伴 wǒ ài wǒ lǎo bàn! 私はが大好きです!
3 水饺多少钱一碗? shuǐ jiǎo duō shǎo qián yì wǎn? 水餃子は一杯いくらですか?
睡觉多少钱一晚? shuì jiào duō shǎo qián yì wǎn? 睡眠は一晩いくらですか?
4 我找不到我的眼镜 wǒ zhǎo bú dào wǒ de yǎn jìng (自分の)眼鏡が見つかりません。
我找不到我的眼睛 wǒ zhǎo bú dào wǒ de yǎn jing (自分の)が見つかりません。
5 你是中国人,你怎么不会说汉语 nǐ shì zhōng guó rén, nǐ zěn me bú huì shuō hàn yǔ? あなたは中国人なのに、なぜ中国語が話せないのですか?
你是中国人,你怎么不会说韩语 nǐ shì zhōng guó rén, nǐ zěn me bú huì shuō hán yǔ? あなたは中国人なのに、なぜ韓国語が話せないのですか?
6 这家饭馆怎么没有杯子 zhè jiā fàn guǎn zěn me méi yǒu bēi zi? どうしてこのレストランにはコップがないのですか?
这家饭馆怎么没有被子 zhè jiā fàn guǎn zěn me méi yǒu bèi zi? どうしてこのレストランには掛け布団がないのですか?
7 我爱熊猫 wǒ ài xióng māo 私はパンダが大好きです。
我爱胸毛 wǒ ài xiōng máo 私は胸毛が大好きです。
8 你什么时候去山西 nǐ shén me shí hou qù shān xī? いつ山西省に行くのですか?
你什么时候去陕西 nǐ shén me shí hou qù shǎn xī? いつ陝西省に行くのですか?

保存版!ピンイン一覧表

中国語には21の声母と36の韻母がありますが、そのすべての組み合わせが存在するわけではありません。約400種類あるピンインを一覧表にしてみました。

実際には発音されないことから、「w」と「y」は声母だとみなされない場合があります。とはいえ「w」や「y」で始まるピンインは存在するので、表の縦の欄(声母)にはこの2つが含まれています。(その結果、声母の数が23になっています。)

Berlitz-Pinyin-Chart.png

漢字からピンインへの変換

「この漢字のピンインを知りたい」というときはどうすればいいのでしょうか。

調べたい漢字と「ピンイン」というキーワードで検索すると簡単に分かるほか、このサイトのように自動的に変換してくれるツールもあります。

また日本語と似ていて、漢字の一部分から読みの見当をつけることもできます。

例えば日本語の「家」「稼」「嫁」は、どれも音読みで「か」と読めますよね。これが中国語だと「家」のピンインは「jiā」、「稼」は「jià」、そして「嫁」も「jià」なのです。

声調は違うこともありますが、音を表す構成要素が同じ漢字の場合、ピンインを推測するヒントになりえます。

その他の発音表記システム

ピンインが中国で正式に導入されたのは1958年で、中国語の発音表記法はそれ以前にもいくつも存在していました。そのほとんどは使われなくなりましたが、今でも固有名詞や歴史的文書などにその名残がみられることがあります。

  1. ウェード・ジャイルズ式(Wade-Giles system)
    ピンインが導入されるまでは、ウェード式とも呼ばれるこのローマ字表記方法がもっとも一般的でした。台湾では今も使われており、地名、人名などの固有名詞にも使われています。北京が標準中国語の「běi jīng」ではなく「ペキン」(Peking)と表記・発音されることがあるのも、この方式によるものです。
    19世紀後半に「実際の発音により近い表記を」とイギリス人によって開発されたシステムで、ピンインとはかなり異なります。
  2. イェール式(Yales romanization)
    第二次世界大戦中に米国イェール大学で開発された、東アジアの4言語(北京官話、広東語、朝鮮語、日本語)のローマ字表記システムです。北京官話(標準中国語、普通語)版は1943年、同大学のジョージ・A・ケネディによって考案されました。
    もともと陸軍での使用を目的に作成され、やがて学生への教育目的に用いられるようになり、米国内で定着します。ピンインが主流になってからはほぼ使われていませんが、このシステムの声調記号システムはピンインに受け継がれています。
  3. ボポモフォ(注音符号)
    中国本土で使用されているほぼ唯一の発音表記システムはピンインですが、台湾ではこのボポモフォが使われています。注音(zhù yīn)とも呼ばれ、ピンインと違ってローマ字を使用せず、漢字とも違う独特の記号が用いられます。
    ボポモフォは、もともと外国人学習者向けではなく、国内の子供たちに漢字の発音を教えるために開発されました。音を表現する、極端に単純化された記号、そして声調を表すアクセント記号で構成されます。

よくある質問

中国語の発音はピンインでマスター!

ピンインの習得は、中国語学習においてゲームチェンジャーと言えます。辞書を引いたり発音を調べたりするのも、ずっと簡単になるからです。また新しい単語に出会っても、ピンインさえ分かればすぐに発音できるようになります。

中国語の発音は日本人にとって、とても難しいもの。でも後の学習をよりスムーズで効率的にするためにも、最初の段階でしっかり身に付けましょう。

ベルリッツの中国語レッスン

発音は、文法や単語と比べても自力でマスターするのが難しいもの。日本人に馴染みのない「声調」によって意味が変わってしまう中国語の発音は、尚更難しいと言えるでしょう。

ベルリッツの中国語レッスンでは、ロールプレイなどを通して実践的な会話練習を行うなかで、発音についても教師がフィードバックを行いながら丁寧に指導します。

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