1.状況を設定する


想像してみてください。

あなたは海外に出張することになりました。
あなたのメインミッションは、自社製品の販売店契約に合意、サインしてもらうことです。

以前海外に出張した際は上司に随行する形でしたが、今回はあなた一人です。
コミュニケーションに使っている言語は英語で、これまでの電話やメールから察するに、先方の担当者の英語力はネイティブ並みです。

先方は魅力的な販売網を持っており、あなたの会社は先方に大きく期待しています。
一方で、販売店契約の内容について、先方は契約期間、最低発注数、独占的営業エリアについて、まだ交渉の余地ありと考えている様子です。

・・・想像できましたか?
シミュレーションの目的は、出張中の最初から最後までの様々な場面で相手が言いそうな言葉、自分が言うかもしれない言葉を洗い出し、対策を取ることです。
そのため、実際にあなたがシミュレーションをするときも、状況の設定は細かく行いましょう。
ここからは、この例に沿って、具体的に各シーンで想定される会話を練習していきます。

2.本題を切り出し、その日のゴールを設定する


先に打ち合わせの流れや目的を切り出すと、自然に会議の主導権を握ることができます。
ぜひ、あなたから率先して話題にして、会議をリードする側になりましょう。

1)会議時間を確認する

会議の予定は、仮に事前にメールで決めていたとしても、直前に変わり得る部分です。
現地であらためて確認できると安心です。
次の例を聴いてみましょう。

スクリプト

You:
First of all, thank you very much for taking the time to see me this week.
May I ask you about your schedule today?
I’d like to know how much time we have for our discussion.

Mr. Gruber:
I usually leave the office at 6 p.m. It’s three now, so we have three hours or so today.
I’d be delighted if you could join me for dinner tonight. My team members will also be joining us.
They’ve all been looking forward to meeting you.
Tomorrow, I have time scheduled from 10 to 12 in the morning for us to meet.
I was planning to show you around some of our shops tomorrow afternoon.
For Friday, I have the meeting room from 10 to 12 again, so we can cover any further discussion items then.
I’ve lined up our sales staffs to be available if necessary.
I hope that will be enough time to cover all our business.
It will be the time for you to leave for the airport after lunch.

You:
That sounds great. Thank you very much for freeing up so much of your and your team’s time this week.

和訳

あなた:
まずは、今週私のためにお時間をいただけることに御礼申し上げます。
あなたの本日のご予定を伺ってもよろしいでしょうか。
私たちのディスカッションにどのくらいの時間が取れるか知りたいです。

グルーバー氏:
普段は午後6時に退社します。今は3時なので、今日はあと3時間くらいですね。
もしよろしければその後夕食にお誘いさせてください。私のチームメンバーも参加する予定です。
彼らも、あなたとお会いできるのを楽しみにしています。
明日は午前10時から12時まで、私たちのミーティングの時間として予定しています。
午後は我々の店舗をご案内できたらと考えています。
金曜日は、同じく10時から12時まで会議室を予約しています。カバーしておくべき他の議題についても、そこでディスカッションができるでしょう。
必要ならばセールススタッフを同席させる用意があります。
これらの時間で、私たちの用件すべてをカバーできると良いのですが。
昼食を済ませたら、あなたが空港に向けて出発される時間になるかと思います。

あなた:
すばらしいです。あなたと、あなたのチームの皆様のお時間を今週そんなにも確保くださり、どうもありがとうございます。


2)アジェンダ、会議の目的を確認する

次いで、その日話すトピックと、議論の進め方、そして最終ゴールを確認しましょう。
その場でホワイトボードなどにアジェンダを書き出して共有できると安心ですね。
具体的にそれをどのように切り出すのか、想像してみましょう。

スクリプト

You:
We are here to finalize the reseller agreement.
I’m glad that we were able to agree to most of the draft.
There are still a few points we have to finalize.
Can I suggest we use the first hour or so to cover your areas of concern?
I want to understand exactly what it is we still need to fix.
I’ll try to answer each one as we move through the agenda.
We can use any remaining time to tie up the loose ends and confirm what we’ve agreed.
If we need to involve my colleagues in Japan, I’ll ask them immediately after our meeting.
That way I’ll be able to bring all the answers to the meeting tomorrow morning and hopefully agree on the terms and conditions.
Are you happy to proceed with the agenda on that basis?

Mr. Gruber:
Perfect, that’s what I was expecting. Thank you for being so well prepared.
May I add just one item to the agenda for the first hour?
I’d like to present our sales plan to you to give you an idea of the bigger picture. It should only take 10 minutes.

You:
That sounds very interesting. Excellent. Shall we kick off with your presentation?

和訳

あなた:
私たちは、販売店契約を最終化するためにここにいます。
私たちがドラフトの大部分に合意できていることを嬉しく思います。
まだ、わずかに、確定すべきポイントが残っています。
初めの1時間、あなたが懸念されている領域をカバーすることに時間を使うことを提案させていただけますでしょうか?
ここで何を決めなければならないのか、正確に理解したいのです。
一つひとつについて、できる限りその都度お答えします。
残りの時間は、曖昧なところをクリアにしたり、合意内容を確認したりすることに使えるでしょう。
日本にいる同僚を巻き込む必要があれば、ミーティングの後ですぐに彼らに連絡します。
そうすれば、明朝には回答をお持ちして、きっと契約に合意することができるでしょう。
このような進め方でよろしいでしょうか?

グルーバー氏:
完璧です、まさにそれを期待していました。準備くださりありがとうございます。
最初の1時間に一つトピックを加えてもよいでしょうか。
より大きな青写真を描く際のご参考に、私たちのセールスプランを発表させていただきたいのです。
ほんの10分ほどです。

あなた:
とても興味深いです。素晴らしいです。では、あなたのプレゼンテーションで始めましょう。

3.懸案事項を解消する


先方が提示したのは充実した販売網を武器とした積極的なセールスプランで、その半面、要求の中には一方的と思われるものも含まれていたと仮定します。
そんな場合に備えて、相手の言い分を受け入れつつ、あなたの懸念や疑問を解消するためのフレーズを用意しておきたいものです。
では、具体的なフレーズの例を見てみましょう。

1)相手の発言の妥当性を検証する

魅力的な予測を示されたとして、その根拠が分からなければ、それを信頼することはできません。
参考にできる実績数値や確度を、一つひとつ丁寧に確かめられると良いですね。
ではそのフレーズを聴いてみましょう。

スクリプト

You:
Thank you very much for such an attractive proposal.
I’m especially impressed by the projected sales targets.
Could you explain the data and rationale behind the targets you presented?

和訳

あなた:
魅力的なご提案をありがとうございます。
とくに、計画された販売目標が印象的でした。
おっしゃった目標の背景にあるデータや論理的根拠について、説明していただけますか?


2)論理が不明瞭なところを確認する

腑に落ちない論理展開があった場合には、説明を求めることも重要です。
あえて直球で訊ねるフレーズを聴いてみましょう。

スクリプト

You:
Excuse me, can I ask about the logic here? I’m not sure I understood the connection.
What kind of promotion activities are you planning to carry out?

和訳

あなた:
すみませんが、ここの論理についてお伺いできますか。つながりを理解できているか不安です。
どのような販促活動を実施されることを計画されているのでしょうか?


3)折衷案を提示する

修正されるべき条件として、先方は独占的販売地域の拡大、最低保証数量の削減を提起してくるとします。
当面の最低保証数の縮小を受け入れる代わりに、独占的販売地域は当初予定国に限ることを主張したい場合、どのような交渉になりそうでしょうか。
少し難しい表現も出てきますが、交渉の例を聴いて、雰囲気をつかみ取ってみてください。

スクリプト

You:
Thank you for outlining your areas of concern. They make a lot of sense.
We are happy to start with the smaller minimum guaranteed quantities and gradually increase them, but if that is so, we would like to keep the exclusive sales territory limited to you home country only as per the original draft.

Mr. Gruber:
Do you mean that as a bargaining position?

You:
In a sense, yes.
I’d like to ask you to concentrate on achieving results in your home territory first.
That is the condition on which we can accept the smaller minimum quantity.
We can of course assure you that you will have first refusal when we start to seek resellers in the wider area you mentioned.

Mr. Gruber:
That seems reasonable enough. I agree.

和訳

あなた:
ご懸念点を明確にしてくださりありがとうございます。非常によく分かりました。
私たちは、最低保証数量をより小さなところから始めて、段階的に増加していくことに喜んで同意します。
その代わり、独占的販売地域については当初のドラフト通り、あなたのホームカントリーのみとできればと思います。

グルーバー氏:
それは交渉上の立場からおっしゃっているのですか?

あなた:
ある意味ではそうです。
最初はあなたのホームテリトリーで実績を出すことに集中してほしいのです。
それが、より小さな最低数を受け入れる条件になります。
もちろん、あなたが挙げた他の国で販売店を探し始める際には、あなた方に第一交渉権があることを保証します。

グルーバー氏:
それならば、十分、理にかなっているようです。賛成します


4)課題を保留し、持ち帰る

その場ですぐに回答できかねる場合には、一度持ち帰って社内のメンバーで検討することもありますよね。
そのような時に使える表現も練習しておきましょう。

スクリプト

Mr. Gruber:
Do you have any specific ideas for the minimum quantities for each phase of the deal?
What will the conditions be for moving to the next phase?

You:
Please let me consider that overnight. I’d appreciate a chance to check with my colleagues.
I’ll be able to get back to you on this point tomorrow.

和訳

グルーバー氏:
取引の各フェーズにおける最低数量について、何か具体的な考えをお持ちですか?
次のフェーズに移るための条件はどのようなものになるでしょうか。

あなた:
それは一晩検討させてください。同僚に確認させていただければ幸いです。
この件については明日お戻しできると思います。

4.合意を確認する


全ての課題がクリアになったら、いよいよ契約締結の最終局面です。

1)契約内容を最終確認する

積み残しがないか、修正内容の認識が合っているかを確認するやりとりを聴いてみましましょう。

スクリプト

You:
Please let me confirm. Here are the revised conditions of our agreement.
All the items and concerns have been resolved. I believe we have a deal.
I think we are both ready to sign, don’t you?

Mr. Gruber:
Let me see… yes indeed. I really appreciate your consideration.
I think we have a very solid agreement and a strong basis for future collaboration and growth.

和訳

あなた:
確認させてください。これらが、私たちの契約の中で訂正した条件です。
全ての課題や懸念点が解決されました。契約成立を確信しています。
私たちは、もう互いにサインする準備ができているように思えますが、いかがですか?

グルーバー氏:
拝見します・・・問題ありません。あなたのご配慮に大いに感謝いたします。
私たちは、非常に確かな合意と将来の協力と成長に向けた力強い基盤を手に入れたと思います。


2)次のステップを確認してクローズする

この後、契約締結までどういう流れで進むかを明確にし、話を切り上げる場面の実践例です。

スクリプト

You:
Okay, I’ll ask my colleagues to make the revisions and to prepare two copies.
When I return to my office, I’ll get our president to sign them and courier them to you.
Please sign them and return one copy to us.

Mr. Gruber:
All right, thank you.
Let’s move on to the next topic!
Let’s have some lunch and then I’d like to invite you to visit one of our shops.

You:
That sounds perfect. Thank you very much!

和訳

あなた:
わかりました、では、修正の上コピーを2通用意するよう同僚に依頼します。
私が会社に戻り次第、社長のサインをもらい、あなたにそれらを送ります。
2通ともにサインの上、1通を返送してください。

グルーバー氏:
承知しました。ありがとうございます。
では次の話題に移りましょう!
昼食をとって、それから私たちの店舗の一つの訪問にお誘いさせてください。

あなた:
完璧です、どうもありがとうございます!


* * *

契約交渉のシミュレーション練習はいかがでしたか?
シミュレーションのコツは、できるだけ悪いシチュエーションを想像することです。
自力で思い浮かべられなければ、社内の先輩に「これまでに経験されたなかで一番大変だった商談はどのようなものでしたか?」と訊ねてみるのも手です。
「商談をリードするはずの上司が体調を崩し、ホテルのベッドから動けなかった。自分が話す想定をしておらず、現場で準備する羽目になった」など、思いがけないエピソードが出てくることでしょう。
しっかり準備して、あなたの商談を成功させてください!

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