AIは私たちの生活に溶け込んでいる


毎日1億9000万人以上が利用しているChatGPT。もはやAIは特別なものではなく、私たちの日常に深く根付いています。

近所の美味しいカフェを探す時、元恋人からの微妙なメッセージの真意を読み解くとき、私たちは自然とAIの力を借りています。これらは、企業も例外ではありません。生産性向上のため、あらゆる業務プロセスにAIを取り入れているのが現状です。

 

では、言語学習はどうでしょうか。

AIは教室も、教科書も、さらには人間の教師さえも不要にしてしまうのでしょうか?

 

ベルリッツの答えはシンプルです。どちらか一方ではなく、両方が言語学習には必要です。 

最も効果的な言語学習は、教師の人間味がある指導と、AIを組み合わせることで生まれます。

 

以前、私たちはAIが人間の教師に取って代わることはなく、むしろ学習をより効果的にする理由についてお話ししました。 今回は、その未来がすでにどのように実現しているのか、より深く掘り下げていきましょう。

言語学習に欠かせない「人」の力

 

ベルリッツが行った調査から分かったことです。

それは、人は人から学ぶことを好むという、ある意味当たり前の事実でした。

 

確かに、AIは優れた学習ツールになります。

ですが、受講生一人ひとりの好みや感情、彼らのペースに完全に寄り添うことは現時点ではできません。そして何よりAIが決定的に欠けている部分は、人間同士のつながりです。

 

実は、この「つながり」こそが、世界中の言語受講生にとって最も大きなモチベーション源の一つなのです。

つながりが生む学習効果という、ここで認識しておくべき重要なポイントがあります。それは、言語学習で使われるAIツールの大半は、次に来る単語を予測する大規模な統計モデルに基づいています。

 

つまり、あくまで高度なテキスト予測技術なのです。批判的思考力、共感力、受講生の表情やボディランゲージ、困惑した様子を読み取って指導方法を変える能力——これらは現時点では、AIにはありません。

 

これらが、とても重要なことです。なぜなら、教育は単に情報を伝えるだけではなく 、文化的な背景を含めて、人を理解することが教育の本質です。

 

人間の教師は生徒の不安を察知し、小さな成功を心から喜び、その場で受講生に合わせて教え方を調整することができます。人と人とのやり取りを通して、背景にある物語を伝え、文化を共有し、個人的な経験を分かち合う——AIにはできないこれらの要素が、レッスンを受講生の記憶に残る、より共感できるものにしています。

 

調査結果もこれらの内容と一致しています。

受講生は特定のタスクにAIチャットボットを使うのは楽しいと感じる一方で、生身の人間との対話の方がはるかにモチベーションが上がり、学習内容が記憶に残ると答えています。

学習効果の比較:人間 vs AI

 

今やAIは言語学習のほぼすべての段階に組み込まれています。

教師は文法や語彙の練習問題作成(約41%)や、読解・聴解教材の生成(約35%)にAIを活用しています。受講生も発音練習、即時フィードバック、新しい単語の発見などにAIを使っています。

 

ですが、AIはこのような便利な点が多々あるにもかかわらず、約85%の受講生が人間との交流を「非常に重要」または「ある程度重要」と考えています

人間の教師が勝る理由

 

信頼関係の構築、その場での状況を組み取った修正、文化的なニュアンスへの対応——言語教育のこうした側面において、人間の教師は一貫してAIを上回っています。

 

AIは文法を直し、発音練習を提案し、フラッシュカードで単語を表示することは得意分野です。ですが、受講生の挫折感を察知したり、一人ひとりの学習歴に合わせて説明方法を調整したりすることは難しい状況です。そして、AIは有用であっても、時にシンプルなタスクであっても混乱し、間違った説明や例を出してくることがあります。

 

だからこそベルリッツでは、教師主導の指導とAIを組み合わせることで、より効率的な学習が生まれると確信しています。このアプローチを正しく実践すれば、どちらか一方だけよりも優れた成果、深い満足感、そして持続的な効果が得られます。

 

実際に世界中の教師と受講生の両方が、この考えに賛同しています。

モチベーションこそが学習の成功を左右する

 

ゲーミフィケーションアプリは数百万人のユーザーを集めていますが、一人で学ぶ場合、モチベーションはしばしば薄れていきます。

実際に、サウジアラビアでの英語学習研究がこれを裏付けています。グループ活動に参加し、仲間からフィードバックを受けた学生は、アプリだけに頼った学生よりも、モチベーションと継続率が著しく高かったそうです。

AIには代替できないモチベーション要素

 

その理由は明確です。言語学習のモチベーションは、AIが真に代替できない要素に支えられているからです。

  • ディスカッションやロールプレイなど、教師との対話型アクティビティ
  • 仲間とのやりとりや、教師やクラスメイトからの評価
  • 気にかけてくれる人をがっかりさせたくないという絶妙なプレッシャー

 

AIは教師の褒め言葉を模倣できますが、教師の声のトーン、表情、ボディランゲージに込められた共感——つまり、「フィードバックを本当に意味あるものにする要素」まで伝えきることはできません。

 

受講生にモチベーションが育まれると、上達が加速します。そして上達は、さらにモチベーションを高めます。

自信を持って話せた、教師から肯定的なフィードバックをもらえた——こうした小さな成功体験が、受講生のエンゲージメントを持続させる好循環を生み出します。

AIの限界と課題を知っておこう

 

AIには、言語学習の場面で明確な限界があります。特に、複雑なタスクや英語以外の言語を扱う場合、その弱点が目立ちます。
AIは万能ではなく、複雑な指示をうまく解釈できなかったり、存在しない情報をもっともらしく作り上げてしまうこともあります。

 

最近の研究によると、GPT-3.5、PaLM、LLaMAなどの大規模言語モデルは、特に訓練データで十分にカバーされていない推論タスクを扱う際、自信満々に存在しない情報を生成する傾向が強まっているそうです。

英語以外の言語での課題

 

ほとんどの大規模言語モデルは主に英語で訓練されています。そのため、AIは次のような課題に直面します。

  • 英語を他言語へ正確に翻訳すること
  • 高度な文法概念を説明すること
  • 特定の習熟度レベルに合わせた練習問題を作成すること

あまりメジャーでない言語では、AIは頻繁に不正確または矛盾したコンテンツを生成します。また、文化的文脈やニュアンスを無視した翻訳をするため、ネイティブスピーカーには不自然に聞こえる文が生成されることも多いのが現状です。

 

ある調査で、興味深い結果が出ました。

スワヒリ語で学習したモデルは、同じスワヒリ語のタスクを英語で学習したモデルよりも、ミスが約4分の1しかありませんでした。
つまり、英語を中心に訓練されたシステムは、英語以外の言語に対して不利に働く可能性がある、という考えを裏付ける結果になったのです。

教えることと情報提供は別物

 

言語の問題に加えて、教育面そのものにも課題があります。

システムが大量の情報にアクセスできても、それだけで「上手に教えられる」とは限りません。

 

実際、受講生にはジレンマがあります。AIが正しいことを教えているか判断するには、その内容についてある程度の知識が必要だからです。このことが、教育における大きなギャップを浮き彫りにしています。

 

そして、AIは情報の提供はできますが、人間の教師のように受講生を観察し、反応し、気遣うことはできません。教師は受講生の表情や雰囲気から内容の理解度を読み取り、ペースを調整したり、内容を変化させたり、AIには難しい細やかなフィードバックを提供できます。

 

だからこそベルリッツでは、AI技術に完全に依存せず、適切に統合するという方針を取っています。AIはあくまで支援ツールであって、熟練した教師の指導に代わるものではないのです。

ベルリッツのアプローチ:AIと人間の最強タッグ

 

現実として、AIを無視していては、教育者や教育機関は、今後は取り残される可能性があります。

しかし、賢く活用すれば、AIは受講生の上達を加速させ、自主性を高め、教師の負担を軽くするなど、多くの価値を生み出します。

 

ベルリッツでは、「AIに取って代わられるのではなく、AIと協力すること」が最善の道だと確信しています。

ベルリッツ・メソッド®×AI

 

ベルリッツのアプローチは、AIのスピードと柔軟に、 訓練を受けた教師の共感力、専門知識、適応力を組み合わせるものです。

 

これらについては 、単なる汎用技術ではなく、ベルリッツの長年の語学教育の経験をもとに、教師が ベルリッツ・メソッド®沿ってAIツールを丁寧に調整しています。ベルリッツのAI機能は、 受講生に確かな価値を届けるために、プロンプト設計やテストを重ね、改良を加えたうえで提供されています。

 

成果が証明するAIの効果

 

私たちは AIと教師、双方の強みを組み合わせることで、受講生に確かな成果が生まれています。

AIを学習体験に取り入れたことで、学習セッションの回数や学生 のエンゲージメントが明らかに向上しました。

特に「MyBerlitz Speaking Tutor」を導入した結果、受講生の平均スピーキング時間は月に最大6時間増加しています。さらに、調査では93%の受講生が「MyBerlitz Speaking Tutorは学習にとても役立った」と回答しています。

プログラムにおけるAIと人間指導の融合

 

当社はAIを以下のプログラムに組み込んでいます。

  • 「Berlitz Live Online」 
  • 「Berlitz Flex」
  • 「Berlitz On Demand」

これらのAI機能は、すべてスマートフォンなどのモバイル端末から利用できます。


学習は、進捗に合わせて順番に開放される自己学習型 のビデオレッスンやアクティビティに沿って進みます。
さらに、学習中のテーマに合った演習・クイズ・ゲームなどのAIツールも、同時に使いながら学べます。

 

MyBerlitz Speaking Tutor

ベルリッツのAI機能の中でも最も強力なのが「MyBerlitz Speaking Tutor」です。
140年以上の歴史を持つベルリッツ・メソッド(R) で訓練されたAIが、スピーキングや発音の練習をサポートし、リアルタイムでフィードバックを行います。

 

現在、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語の4言語に対応しており、現実に近い場面を再現し、受講生は声やアクセントを選べるほか、プレゼン、会議、面接など実務に近いテーマも練習できます。

 

24時間365日対応のAI学習アシスタント

さらに、受講生はいつでも使えるAI学習アシスタントを利用できます。
語学学習に特化したチャットボットで、必要なときに次のようなサポートを提供します。

  • 質問への回答
  • 内容の説明
  • 翻訳
  • メールやプレゼン資料の校正
  • 必要に応じた正確なフィードバック

 

ベルリッツ・メソッド® を基盤に設計

ベルリッツのAI機能は、コースに“後から付け足した”ものではありません。
教師と学習デザイナーが設計した学習パスをもとに、すべてがベルリッツ・メソッド®に根ざして作られています。つまりAIの働きは、会話力向上と実生活で使える語彙習得を中心とした、没入型学習を強化する役割を担っています

また、受講生のレベルに合わせつつ、バランスの取れた学習活動に自然に組み込まれるよう意図的に設計されています。

 

次なるステップ:AIが変える学習の未来

正直なところ、現時点でAIが語学学習にもたらす可能性は、まだごく一部しか見えていません。
ベルリッツは今後、学習経路をよりパーソナライズ化し、AIを実際のシチュエーションにより深く結びつけ、受講生と教師を同時に支えるAIエコシステムの構築を目指しています。

パーソナライズされた学習体験

 

当然ながら、当社のMyBerlitz Speaking Tutorも進化を続けます。

  1. 対応言語の拡大
  2. 学習体験のカスタマイズ(リアルタイム or 事後フィードバックなど)
  3. 実際の文脈や文化的ニュアンスへの対応(メキシコとスペインのスペイン語の違いなど)

さらに、学習の継続率向上やモチベーション維持をサポートする仕組みも検討しています。

 

品質保証とリアルタイム改善

 

レッスン内容の文字起こしや参加状況の分析、ベルリッツ・メソッド®正しく使われているかを確認する自動品質チェックも導入予定です。
これにより教師や管理者はレッスンの状態をリアルタイムで把握し、迅速な改善や成果向上につなげられます。

 

教師を支えるAI

 

教師にとってもAIは強力な味方です。


教材作りやアクティビティ提案、生徒 のニーズの把握などをAIが補助することで、教師は本来の仕事である「教えること」に集中できます。
また、AIは新任教師のトレーニング支援、モデルレッスンの提供、フィードバックの自動化、認定プロセスの効率化にも役立ちます。

 

まとめ:本当の進歩を生むのは「AI×人間」

 

ベルリッツは、AIによるパーソナライズと、人間教師の指導を組み合わせた学習体験を追求しています。
AIと人間は、それぞれ強みと限界がありますが、一緒に活用することで、より豊かで効果的な学習が実現します。

 

AIが急速に進化し、語学学習に特化したモデルが増える中でも、はっきりしていることがあります。
AIはまだ、教師が持つ共感力・適応力・人間的なつながりを完全に代替することはできません。

だからこそベルリッツは、教師主導型プログラムや自己学習型 プログラムを置き換えるのではなく、それらをサポートし強化する形で、生成AI機能を進化させています。

未来の語学学習は、AIか人間かの二択ではありません。
AIと人間が協力し合う未来です

 

あなたもベルリッツの語学学習を体験してみませんか?