オーバーラッピングとは?

オーバーラッピングとは、教材のスクリプトを読みながら、流れる英語の音声と同時に発声を行うことで、リスニング力とスピーキング力を同時に鍛えることができる効率的な英語の学習方法です。

英語のOverlap(重ね合わせる)という言葉を語源に持つこの学習方法では、音声にピッタリと重ね合わせて英文を読む訓練を行います。

この練習を繰り返し行うことで、ネイティブの言っていることを理解する力が身につき、彼らのような発音を身につける近道となります。

オーバーラッピングとシャドーイングの違い

オーバーラッピングとよく似ている英語の学習方法のひとつに、シャドーイングというものがありますが、違いをご存じでしょうか? 

シャドーイングとオーバーラッピングには、異なる特徴が2点あります。

1点目は、発声のタイミング。 シャドーイングでは英語の音声を聞きながら、少し遅れて音声を追いかけるように発声するのに対し、オーバーラッピングでは音声と同時に発声します。

2点目は、スクリプトのあるなし。シャドーイングでは何も読まずに、影のように英語の音声を追いかけて発声するのに対し、オーバーラッピングではスクリプトどおりに読んで発声します。

何も見ずに音声だけを頼りに発声するシャドーイングは、難易度が高い中上級者向けの英語の学習方法ですが、オーバーラッピングは誰でも分け隔てなく学習できる方法なのです。

英語はコミュニケーションツール。文章を読んだり動画を眺めていたりするだけよりも、やはり五感を多く使って勉強する方が早く上達します。

例えば、自動車の運転技術の習得に似ています。自動車の運転技術は、座学や本を読むだけではなかなか上達しません。実際に車を動かして、車の運転を体に慣れさせることで運転技術を体得します。

日本の学校で教えられる英語の授業は、これまで文法や読解が主で、五感を用いて学習する機会にあまり恵まれていませんでした。

そのため、五感を用いるオーバーラッピングの学習方法が、英語力を劇的に向上させられると今注目を集めているのです。

オーバーラッピングの効果

ここまで、オーバーラッピングはスピーキングやリスニングに効果があると書きましたが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?詳しく紹介します。

発音の矯正

英語を正しく発音するには、次の5点すべてが一定のレベルに到達することが欠かせません。

  1. スピード
  2. アクセント
  3. イントネーション
  4. 音声変化
  5. リズム

これらは、スクリプトを音読するだけでは身につきません。モデル音声なしで読むと、どうしても自己流の発音になってしまいがちです。

そこで、英語が母国語の人物が発声する音声を用いて、オーバーラッピングで学習するとよいとされています。

オーバーラッピングでは、一言一句モデル音声と同じタイミングで話すことが求められるので、英語が母国語の人たちのスピード感とリズム感が身につきます。

上であげた5点すべてが理想的なレベルに達することで初めて、相手と快適なコミュニケーションがとれるようになります。 

しかし5点すべてを矯正することは簡単ではないので、最初は最も矯正しやすい「スピード感」と「リズム感」の改善に集中するのがよいでしょう。

そして次に「アクセント」や「イントネーション」、「音声変化」の練習をすることをオススメします。 

正しい発音は、異文化から来る人物と正確に意思疎通を図るには不可欠。オーバーラッピングで積極的に訓練を重ねることで、ネイティブが違和感を感じることのない英語特有の発音もできるようになりましょう。

リスニングスキルの向上

リスニングスキルとは、まずは音を識別して、それを正確に解釈する能力を意味します。

4つの言語スキル(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)のうち、人が生まれてから最初に身につけるのがリスニングスキルです。

そのためリスニングスキルは言語スキルの中枢とも言える大切な能力であり、これさえ征することができれば、コミュニケーション能力は飛躍します。そこで近年最も注目されているのがオーバーラッピングです。

人は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を出来るだけ多く同時に使って学ぶ方が、上達スピードが早いと言われています。目でスクリプトを読み、耳で音声を聞き、口を動かすオーバーラッピングは、さまざまなリスニング勉強法の中でも、複数の器官から脳が刺激を受けるため上達が早いと考えられています。

ところで、大抵の日本人が英語のリスニングでなぜ苦労するかご存じでしょうか?

それは言語の構造が異なるからですが、もう一つ、英語の発音はネイティブでも個人ごとに異なることが珍しくなく、私たちが教科書で習ったものと同じように発音しないことが多いからです。

ネイティブは会話中、音を省略したり、言いやすいように音を変えて発声することが珍しくありません。しかし彼らは適当に自分が発声しやすいよう言い換えている訳ではなく、英語の音声変化のルールにのっとって話しています。

そのため、音声変化のルールを理解することも大切です。トレーニング中は、音声変化がおきている箇所を含めて、一つ一つの音もテンポも抑揚も何もかも、音声に完全にかぶさるように合わせて声を出すようにしましょう。それができれば、ネイティブの会話を聞き取る力が定着していきます。

オーバーラッピングの正しいやり方

ここでは、オーバーラッピングの具体的なやり方を説明します。

  1. 事前準備
  2. 言葉の確認
  3. 聞き取れない場所の特定
  4. 演習
  5. 仕上げ

この5つのステップについて、詳しく丁寧に解説しているのでぜひ参考にしてください。

1. オーバーラッピングの事前準備を行う

オーバーラッピングは、一般的な座学と異なり五感を用いて行う学習方法のため、環境面において以下3点に配慮して準備を行うことが必要です。

  • 音声が聞き取れる場所の確保
  • 自分が大声で発声できる場所の確保
  • 自分に合った英語の音声付き教材の入手

1点目は、流れる音声をしっかりと聞き取ることができる静かな環境です。周囲にテレビを見たり騒いでいたりする人がいたり、工事や車の騒音が聞こえたりする環境は避けましょう。

2点目は、自分が声を出しても周囲に迷惑がかからない環境。家族が起きてしまうかも、隣の人に聞こえたら迷惑かも、などの不安がない環境と時間帯を確保しましょう。

3点目は、自分に合った英語の音声付き教材。大きくは難易度、内容、フレーズの長さを考慮する必要があります。 これらがあなたに合う教材を選んだ方が、リスニング力とスピーキング力の上達が早まります。これについては後ほど詳しく解説しています。

では次に具体的なオーバーラッピングのやり方を見ていきましょう。

2. 目読で知らない言葉を特定する

音声を聞く前に教材のスクリプトを声を出さずに読んでみましょう。知らない言葉がいくつか出てくることでしょう。 

知らない言葉の意味は、辞書を使って確認しておきます。音声を使う前に、必ず意味がわからない言葉がない状態にしましょう。

言葉の意味を知らずにオーバーラッピングするよりも、熟知した上でする方が上達が早いです。

3. リスニングで聞き取れない箇所を特定する

実際にリスニングをしてみて聞き取れない箇所がないか確認しましょう。その際、スクリプトを見ながら音声を聞いてください。

耳慣れない言葉や聞き取れない言葉が出てくるはずです。

そういった箇所は、ネイティブがどのように発声しているのかがわかるようになるまで、何度も繰り返し聞くようにしましょう。

耳が慣れることでリスニング力が伸び、さらにその言葉を自分でも再現して発声を繰り返すことでスピーキング力が大幅に向上します。

4. 実際にオーバーラッピングをする

オーバーラッピングを行うにあたり、知らない言葉やリスニングで聞き取れないところがなくなっていますか? もし不明点や聞き取れない箇所がまだあったら、確認作業を終えてからオーバーラッピングに取り組みましょう。

確認作業を終えた方は、下の3つの点に注意しながら、実際にオーバーラッピングをしましょう。

  • 英文スクリプトを必ず目で追いながら話す
  • 英語の音声に最初から最後までピッタリ合わせて話す。アクセント、スピード、イントネーション、リズム、間、音声変化を忠実に再現できるよう努める
  • カタカナ英語で話さない(恥ずかしがらずにネイティブをまねして話す)

ひとつでも欠けているとよい効果が期待できません。必ずこの3点をおさえた上で練習することが大切です。

5. 仕上げる

オーバーラッピングは、音声どおりに話すこと、音声を聞き取ることができるようになること、これらの2点を達成するのが目的です。

学習中はこれら2点に集中し、他のことに意識が向かないように気をつけましょう。

もしうまくオーバーラッピングができていないと感じれば、一言一句がクリアに聞こえるまで繰り返し音声を聞くことが大切です。

聞き取りにくい場合は、文章をフレーズに、さらに単語にと、こまかく区切って聞くことが大切です。

そしてモデル音声とまったく同じ調子で始めから終わりまでピッタリ話すことが出来るようになれば、目的達成です。

自分に合った教材の選び方

効率的にオーバーラッピングで学習するには、自分に合った教材が欠かせません。

自分に合っていない教材を使うと、本来鍛えられるはずのリスニングやスピーキングの練習以外で余計な労力が必要になり、最悪いつまでたっても上達しない場合もあります。

そこでこの章では、あなたに合った理想的なオーバーラッピング用の教材の選び方について解説します。

  • 自身の英語レベルに合った教材を選ぶ
  • 自身が興味を持てる分野で教材を選ぶ
  • 短い文章で書かれた教材を選ぶ

自身の英語レベルに合った教材を選ぶ

自身の英語レベルに合った教材とは、9割以上辞書なしで読めるテキストです。一つのフレーズで、何度も辞書を調べなければならないテキストでは難しすぎます。

ほぼ辞書なしでも快適に読むことができるテキストが理想的です。

自身が興味を持てる分野の教材を選ぶ

例えば、音楽家は音楽について書かれた教材を、乗り物好きなら自動車や飛行機について書かれた教材を選ぶようにすると、スピーキング力もリスニング力も上達が早まります。

興味がない分野で勉強をするのは苦痛で、どうしても学習効果が出るまでに時間がかかります。自分の好きな分野なら学習が楽しくなり、長時間勉強しても苦痛にならずに早い段階での上達が見込めます。

興味を持てる分野の教材を入手することが難しい場合、読んで苦痛に感じない分野で教材を選ぶとよいでしょう。

短い文章で書かれた教材を選ぶ

スピーキング力とリスニング力を鍛えるには、短い文章で学ぶ方が上達が早まります。

長いフレーズの場合、息継ぎが大変だったり、どこを強調して抑揚をつければよいのかわからず、それだけでストレスになり、意欲が削がれます。

シンプルで理解しやすく、発音にも苦しまない短い文章で書かれた教材を選ぶことがスピーキング力とリスニング力を鍛える近道なのです。

その他おすすめの教材

上の3つの基準を満たした教材に加えて、さらにオーバーラッピングにおすすめの教材を紹介します。

  • ディクテーションの解説本
  • 音声変化の解説本
  • 公式TOEIC® Listening & Reading 問題集

ディクテーションの解説本

ディクテーション(Dictation)」とは、聞いた英語を一語一句書き取る訓練を指します。

流れる音声を聞いて、文章の中に抜けている単語を書く穴埋め方式のものと、全文書き込む方法のものがあります。

前者はオーバーラッピングの初心者向けで、中級者以上の方は後者の教材で学習しましょう。

特に前者は、英文の基礎知識がまだ定着していないような方にオススメしたい教材です。

ディクテーションの教材の中には、会社の上司や同僚、部下との日常会話や対話、留守番電話でのメッセージ、プレゼンテーションなど、普段耳にすることが多いフレーズ集で構成されるものが多くありますので、語彙力や表現力を伸ばしたい方のお役に立つことでしょう。

CDや音声をダウンロード出来る教材は書店などで販売されているので探してみましょう。

音声変化の解説本

音声変化の解説本とは、言葉が話されるときに、もとの発音から変化されるものを説明してくれる教材です。

日本語でも特殊な漢字の読み方があるように、英語の場合、綴りどおりに発音されない単語やフレーズがあります。

このように例外的な発音がなされる単語やフレーズは、5つのルール(連結、同化、ラ行化、脱落、弱形)に基づいたもので、これらのルールを音声変化の解説本では説明しています。

これらのルールを知ることで、リスニング力が向上し、結果的にスピーキング力も向上しますので、ぜひマスターしておきたいものです。

こちらも書店などで探してみてください。

公式TOEIC® Listening & Reading 問題集

TOEIC®のListening & Reading 問題集はオーバーラッピングの練習を行うのに理想的です。

コンパクトな文章構成になっているものが多く、日常的に使用されるフレーズも豊富に活用されています。 TOEIC®の問題集は他の教材よりも中古市場で出回っていることも多く、古本屋で安く購入することも可能です。

まとめ

  • オーバーラッピングの定義と効果
  • オーバーラッピングの方法
  • 教材の選び方

を解説しました。

オーバーラッピングは、発音の矯正とリスニング力アップに効果があります。ただし知識としては正しい方法を知っていても、実際にお手本に合わせてぴったり話せるようになるまでは時間がかかります。

自分では正しくできていると思っても、実際は細かい音や抑揚の違いに気づけていない場合も。そんなときは、英語が得意な友達、ネイティブの知り合い、英会話スクールの先生にアドバイスをもらうことも考えましょう。オーバーラッピングを含む「自主学習」は正しくできて初めて効果があります。それまでは他の人の助けを借りたほうが、上達の近道になることもあるのです。

英会話教室のベルリッツでは、無料体験レッスンを随時受け付けています。お近くの教室またはオンラインで体験ができます。

ぜひこの記事を参考に、正しい方法でオーバーラッピングを繰り返して、英語力を上げていきましょう!

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