学習の効果
オーバーラッピングは、スクリプトを読みながらネイティブスピーカーの音声と同じように発声する練習を行うため、発音が矯正され、リスニングスキルの向上が学習の効果として見込まれます。
それらが具体的にどんなメリットをもたらすのか? 以下解説いたします。
1.発音の矯正
英語を正しく発音するには、次の5点すべてが一定のレベルに到達することが欠かせません。
- スピード
- アクセント
- イントネーション
- 音声変化
- リズム
これらは、スクリプトを音読するだけでは身につきません。そして、モデル音声なしで読むと、どうしても自己流の発音になってしまいがちです。
そこで、英語が母国語の人物が発声する音声を用いて、オーバーラッピングで学習するとよいとされています。
オーバーラッピングでは、一言一句モデル音声と同じタイミングで話すことが求められるので、英語が母国語の人たちのスピード感とリズム感が身につきます。
上であげた5点すべてが理想的なレベルに達することで初めて、相手と快適なコミュニケーションがとれるようになります。
しかし、5点すべてを矯正することは簡単ではないので、最初は最も矯正しやすい「スピード感」と「リズム感」の改善に集中するのがよいでしょう。
そして、訓練を重ねることで、「スピード感」と「リズム感」がある程度のレベルに達した後に、「アクセント」や「イントネーション」、「音声変化」の練習をすることをオススメします。
なかにはネイティブのように話すことが出来なくてもよいと言われる英語学習の専門家もおられますが、正しい発音を身につけることが、異文化から来る人物と正確に意思疎通を図るには必要不可欠です。
日本語とは異なり、子音が多い英語ですが、オーバーラッピングで積極的に訓練を重ねることで、ネイティブが違和感を感じることのない英語特有の発音ができるようになりましょう。
2.リスニングスキルの向上
リスニングスキルとは、耳を通して言語を受け取る技術で、音を識別し、正確に解釈する能力です。
4つの言語スキル(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)のうち、人が生まれてから最初に身につけるのがリスニングスキルです。そのため、リスニングスキルは言語スキルの中枢とも言える大切な能力であり、これさえ征することができれば、コミュニケーション能力は飛躍します。
では、どうすれば効率的にリスニングスキルを伸ばすことができるのでしょうか? さまざまな方法がありますが、近年最も注目されているのがオーバーラッピングです。
人は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を出来るだけ多く同時に使って学ぶ方が、一つの感覚だけを使って学ぶよりも脳が刺激されるので上達スピードが早いと言われています。
目でスクリプトを読み、耳でしっかりと音声を聞き、口を音声どおりに動かすオーバーラッピングは、さまざまなリスニング勉強法の中でも、複数の器官から脳が刺激を受けるため、最も上達が早いと考えられています。
ところで、大抵の日本人が英語のリスニングでなぜ苦労するかご存じでしょうか?
それは言語の構造が異なるからですが、もう一つ、英語の発音はネイティブでも個人ごとに異なることが珍しくなく、私たちが教科書で習ったものと同じように発音しないことが多いからです。
ネイティブは会話中、発音を省略したり、自分が言いやすいように変えて発声することが珍しくありません。 しかし、彼らは、適当に自分が発声しやすいように言い換えている訳ではなく、英語の音声変化のルールにのっとり言葉を変えて話しています。
そのため、音声変化のルールを理解して発声できるようになればよいというわけです。
トレーニング中は、音声変化がおきている箇所を含めて、最初から最後までスピードもテンポも声色もアクセントも何もかも、音声に完全にかぶさるように合わせて声を出すようにしましょう。
練習を繰り返すことで、モデル音声どおりにオーバーラップして声が出せるようになれば、無意識でもネイティブと同じように口や舌を動かして話せるようになります。
それができるようになると、息遣いやアクセント、イントネーションを含めて、ネイティブの会話を聞き取ることができるようになり、リスニングスキルが定着していきます。